金銭面でも趣味に投資を厭わない金井さんに対して、恵さんはブランドものに興味を示さず、浪費を嫌う。最近、ジョギングを始めた金井さんは、夫婦で買い物の最中に1万円のシューズを買おうとしたところ、恵さんから「3000円のタイプでいいじゃない」と横槍が入った。後日、1万円のシューズを購入したが、今も恵さんには値段をごまかしている。

金井さんは、ジムで体を鍛えることにもはまっている。鏡の前で鍛えあげた自分の体を見る瞬間が、家庭のストレスを癒やすひとときだ。しかし、筋トレに必要なプロテインにも、恵さんから高すぎる、という文句の声が出始めている。

といっても、金井さんは派手に散財するタイプではない。始業の1時間前に出勤して仕事関係の勉強に励み、終業後はほとんど寄り道せずに家へ帰る。そして自ら財布の紐を握り、毎月15万円を貯蓄する生活は堅実だ。

「ある程度稼いでほどほどの暮らしができればいい」という志向は恵さんと一致。しかし、趣味への無理解や出費に対する価値観の違いから、夫婦の仲にほころびが入った。子供をあやすとき、つい仕事のことを考えて眉間に皺を寄せる金井さんに怒号が飛び、夫婦の寝室が別々になって長い年月が経つ。今では、セックスも月に一度あればいいほうだ。

こうした出来事が重なり、金井さんは学生時代に熱中していた競馬から距離を置き、家での飲酒も多くて缶ビール1本。飲まない日も増えた。

「会話がはずまないのに、酒を飲んでも楽しくないですから」と寂しげに語る金井さんが、今一番楽しいと感じるのは、馬券を買わずに競馬の結果を予想する時間だ。

(滝口浩史=撮影 藤川 太=モデル家計簿作成・解説)