掛け金が全額所得控除の節税効果で断然有利

老後資金づくりに圧倒的な強みを持つのが個人型確定拠出年金(個人型DC)だ。個人型DCには税制上、大きなメリットが2つある。

まず注目したいのが「掛け金の全額所得控除」。所得税や住民税では、年収から控除を引き、残った金額(課税所得)に税率を掛けて税額を計算する。このため、所得控除が多いほど課税所得が減って税額が少なくなる。

もし掛け金を上限の月2万3000円(年間27万6000円)とすると、所得税率10%の人なら所得税が年間2万7600円、住民税(一律10%)と合わせて年間で5万5200円も節税できる。もし22歳から60歳まで38年間続けたとすれば、節税額は200万円を超える計算だ。

なお、節税で浮いたお金は使わずに貯めておくことが重要だ。

積み立てる商品は、預貯金や投資信託、保険などから選択する。もし預貯金を選べば、ノーリスクでこれだけの利益を確実に得られることになる。

一方、投資信託を選べば、さらに「運用益非課税」の効果も期待できる。もし毎月2万3000円を年3%で運用できたとすれば、この節税効果は38年間で約181万円にもなる計算だ。

「積み立てる商品は預貯金でもいいが、もしほかに預貯金で積み立てをしているなら、個人型DCでは投資信託を選ぶほうがいいでしょう。資産全体のバランスを見て決めることが大切です。また、窓口はネット証券など手数料の安い金融機関を選びたいですね」

個人型DCは60歳まで解約できないのが最大の難点だが、解約できないからこそ、確実に老後資金を貯められる。

掛け金全額控除、運用益非課税のダブルメリットを持つ「個人型DC」

▼メリットと注意点

【メリット】
・掛け金全額が所得控除できる
・運用益が非課税になる
・預貯金など元本保証商品も選べる

【注意点】
・60歳まで引き出し不可
・加入時、加入中に手数料がかかる

▼制度の概要

・掛け金の単位……月5000円以上1000円単位
・窓口になる金融機関……銀行、証券会社、保険会社など
・運用する商品……預貯金、投資信託、生命保険など(窓口になる金融機関のラインアップから選ぶ)
・引き出し時の制約……原則60歳から年金または一時金で受け取る。中途解約は不可

▼掛け金全額控除による節税効果

※22歳から毎月2万3000円を積み立てたとき(所得税10%の場合。住民税は一律10%)

年間節税額5万5200円(所得税2万7600円+住民税2万7600円)×積み立て期間38年=60歳までの節税額209万7600円

▼運用益非課税による節税効果

※毎月2万3000円を22歳から60歳まで38年間積み立てたとき(運用利回りは年3%、途中で一度も分配がなく、取り崩しのときに20%課税するとして計算)

●38年間の投資結果(投資額計1048万8000円)⇒約1957.4万円
●運用益非課税による節税額⇒約181.7万円
家計の見直し相談センター 藤川 太

1968年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。自動車メーカー勤務を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。著書に『サラリーマンは2度破産する』ほか。
 
(加藤ゆき=撮影)
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