家庭の味、雑煮はみんな違ってみんないい
さて、ここに挙げた雑煮ほど変わっていなくても、各家庭の雑煮にはさまざまなバリエーションがある。基本的に年一度しか食べられず、家族で食べるものなのでその多様性が外で語られることはめったにない。だからこそ、皆がそれぞれその雑煮が“普通”だと考えている。そこが雑煮の魅力だ。雑煮は、みんな違ってみんないい、の代表だ。それぞれの家庭がそれぞれの味を守りつつも、環境にあわせて変化させていくものなのだ。
ただし問題は、結婚した時だ。相手が全く違う雑煮を食べて育ってきた場合、どうするか。たとえば江戸風雑煮の男性が、蒸し雑煮で育った女性と結婚したら……。
「新婚家庭で、どちらの育った環境の雑煮を食べるか喧嘩になった、という話はよく聞きますよ。結果は、そうですねえ~……」(粕谷氏)
時を重ね、正月にどちらの出身地の雑煮を食べているのかを聞けば、その夫婦の力関係がおのずと伺い知れるというわけだ。
(大塚七恵写真事務所=写真)