万が一をも想定した対策
安全に絶対はない。どうしても、万が一を想定した次善の策が必要になる。その答えが、この12月17日に福井県美浜町で本格運用が開始された『美浜原子力緊急事態支援センター』だ。「支援センターの役割は、原子力施設で事故が発生した際に、速やかに緊急出動隊を編成し、発災プラントへ緊急支援用の資機材を搬送するとともに駆けつけ、発災事業者と協働して高線量下での原子力災害に対応すること」と話すのは同センターの進孝男総括グループマネージャー。9電力会社と日本原燃、そして、運営主体でもある日本原子力発電から選抜された21名の専任チームの一人である。
資機材には、遠隔操作による情報収集・障害物撤去が可能なロボットや重機をはじめ、高所からの放射線量の測定を行う無線ヘリなどを配備。これらを事故プラント付近で遠隔操作することも視野に入れ、被ばく対策を施したロボットコントロール車も準備した。「福島第一原発事故では、高線量下での作業に苦戦を強いられました。遠隔ロボットにより、安全を確保しながら、事故復旧に取り組むことができます。我々は、被害を最小限に食い止めるため、日々運転に携わり、プラントの状況を熟知している現場の社員の方と協働で行います」と進総括グループマネージャー。
そのためにも、電力会社のロボット操作要員の訓練および育成は支援センターの重要なミッションだ。2013年1月に支援センターの前身が設立されて以来、初期訓練と定着訓練を重ねており、これまでに延べ1000名以上が参加した。全国の原子力発電所の防災訓練に延べ50回以上参加し、100名以上の要員を派遣してきた。新拠点が動き出したことにより、今後は一層、現場社員の養成に拍車がかかることになる。
福島第一原発事故により、安全神話は崩壊した。そのことを最も痛感したのが、原子力事業者ではないか。彼らは事故で学んだ教訓をハード面とソフト面に反映するだけでなく、「事故が起こり得る」ことも想定し、さまざまな対策を積み重ねている。原子力発電所のあくなき安全性の追求は、これからも続いていく。