「安全性追求に終わりはない」

従来の地質調査の結果では、浜岡原発周辺に来襲した津波の高さは、6000年遡っても最大8メートル。しかし、福島第一原発事故の教訓から、浜岡原発では震災発生後の2011年7月に海抜18メートル、総延長1600メートルの防波壁を含む津波対策を公表。2015年12月には、津波に対する安全性をより一層高めるため、追加工事で22メートルにかさ上げするなど自主的に対策を進めてきた。さらに、津波が防波壁を超えた場合についても想定し、原子炉建屋など重要設備の扉を防水構造の扉で二重化するなどさまざまな津波対策を施した。

取水・注水ポンプ車(写真)や電源車など幾重にも安全対策が施されている。

また、非常用電源確保の手段も幾重にも講じられている。外部電源を多重化するとともに、そのバックアップとなる非常用ディーゼル発電機が使えなくなった場合に備え、海抜40メートルの高台にガスタービン発電機の設置、その他にも電源車を配備。それでも電源が無くなった場合には、注水ポンプ車といった代替手段を講じることで冷やす機能を確保し、原子炉への注水が維持される。原発の安全対策に関しては十分すぎるほどの手を打ってちょうどいいのかもしれない。

こうしたハード面での対策に加えて、ソフト面としての“現場対応力”の強化も不可欠だ。安全を管理するのは人であり、事故を未然に防ぎ、もしもの時には被害を拡大させないのも人にほかならない。

「初動対応の強化として、事故発生時に真っ先に現場に駆けつけ対応するスペシャリストチーム『緊急時即応班(ERF)』を立ち上げるとともに、緊急時に備えた訓練を年間約600回実施しています。また、過去に発生したトラブルから学んだ教訓や蓄積してきたノウハウを風化させないために、研修センター内にトラブルの概要を示すパネルや実物・模型を展示した『失敗に学ぶ回廊』を設け、技術伝承にも取り組んでいます。安全性追求に終わりはありません」と村松専門部長は語る。