映画俳優、高倉健を見飽きることはない
冨田館長は追悼特別展のカタログにこんな言葉を載せている。
「(高倉健の)転機と思われる時期に作られた『新幹線大爆破』(1975年 東映)と『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年 製作委員会)という2本の映画が、いずれも鉄道をテーマにしていたのは偶然かもしれないが、物語の型が変化するひとつの契機として、移動しない物語が語られたのは、単なる偶然ではないように思われる。それはあたかも、別の型を持つ物語という、新しい旅への支度をしているかのように見えるのだ」
確かに、上記2本に限らず、高倉健の出演作には鉄道がテーマになっていたり、鉄道が重要な役割を果たしている(『駅 station』『海峡』)ものがある。鉄道、駅と縁のある俳優なのだ。
同展の会場は東京駅の構内だ。新幹線が何本も走っている駅で『新幹線大爆破』を眺めるのである。ちょっとした発見だけれど、この展覧会は東京ステーションギャラリーにぴったりとも言える。
冨田館長はつぶやく。
「何時間も映像を注視している人がいるんです」
ファンは映画俳優、高倉健を見飽きることはないのだ。
さて、館内には本人が使用した台本、身分証明書、ポスターなども展示されている。
見逃せないのが『戦後最大の賭場』(1969年 東映)の封切り時に映画館に貼られたポスターだ。高倉健と鶴田浩二が和服を着て、並んでいる絵柄である。
わたしはかつて大英博物館の日本館に行った。すると、「日本の男」という展示にこのポスターが貼ってあったのである。一目見た時はびっくりしたけれど、少ししてから納得した。そして、そのことを手紙に書いて、高倉さんに伝えたことがある。
返事はひとこと。
「ありがとう」だった。
なお、同展はこの後、九州、北海道などにも巡回する。北九州、釧路、帯広、札幌、函館、西宮市といった都市での開催が予定されている。また、プレジデント社から2012年に出版した『高倉健インタヴューズ』の続編、『高倉健ラストインタヴューズ』を現在編集中である(2017年出版予定)。どこにも出ていない高倉さんの遺した貴重な言葉をファンの皆様にお届けしたいと思っている。