英語を学ぶことが目的になってはいけない

三宅義和・イーオン社長

【三宅】私はいつも「力を抜いて」と注意されますが、もともとセンスのある選手たちが素直に学べば、当然のことながら伸びるということでしょうか。それはおそらく、日本人選手であっても一流と呼ばれる人たちは同じだと思います。

ところで、私は自身、英語を学びつつ、合氣道にも取り組む中で、語学の学び方と合氣道の稽古は似ているというか、共通項があると感じています。毎日の努力もさることながら、良い先生、師匠について、正しいやり方を指導してもらう必要があります。

言うまでもありませんが、やはり師という存在は非常に大きい。藤平先生の場合は、図らずしてお父様が師だったわけですけども、普通われわれが世の中生きていく上において、良い先生を持つということが大事だということ再認識しました。

【藤平】師の教えを受けながら物事を突き詰めていくのであれば、自ずと「道」になります。合氣道に対して英語道と言ってもいいかもしれません。そして、「道」の下に「法」があるのです。いわゆるメソッドです。心身統一合氣道にも「氣の呼吸法」「氣の意志法」「氣の体操法」といった具体的なメソッドがあります。

【三宅】面白いですね。

【藤平】ですから「法」や「メソッド」にとらわれてしまっては本末転倒。本来の目的からはずれてしまいます。ですから、英語の学習を「英語道」と考えれば、会話はどこまでもメソッドであり、コミュニケーションを通じて相手を理解することが本来の目的のはずです。人間として成長していくことに関しては、本来、すべてに「道」がついてよいと思います。

【三宅】いまやスポーツだけでなく音楽など芸術の分野でも日本人が世界で活躍しています。けれども、スキルはあるのだけれども、英語力がないために活躍できないという話も聞くことが多いのです。そうした状況を打開するためにも、日本人アスリートたちは英語をマスターし、本来のパフォーマンスを発揮していけば、より多くの人が成功できることは間違いないですね。

最近、私どもの教室にいろんなスポーツ選手やミュージシャンが英語を学びに来られます。理由を尋ねると、海外に行く機会がこれまで以上に広がっているからなのですね。そんな彼らが実感しているのは、試合や演奏のときだけじゃなくて、日常でのやりとりや交渉も英語でできないと、それだけでプレッシャー、ストレスになってしまうということでした。

【藤平】繰り返しとなりますが、そもそも英語を何のために学ぶかではないでしょうか。私は「相手を理解する」ことが第一だと考えます。その上で初めて、自分が何を伝えるかということになります。それが目的であって、英語を流暢に話すのが目的ではないですよね。だとしたら、多少たどたどしくても、きちんと相手に心を向けるという姿勢から始めてしかるべきでしょう。英語を学ぶことそのものが目的になってしまってはいけないと思います。