男性が厨房に立たない理由は、あいまいな「料理用語」

女性の社会進出に伴い、男性に家事負担を担ってほしいと思っている女性は多いのではないでしょうか。「平成23年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)によれば、1日の生活時間のうち、男性の家事時間の平均が37分であるのに対し、女性の家事時間の平均は2時間59分に上ります。おおよそ男:女=1:5です。

女性が最も多くの時間を費やしている家事時間をチェックすると、「食事の管理」(51.1%)が圧倒的割合を占めています。今後、女性の家事負担を大きく減らすためには、家庭で料理を手伝う男性が増えることがポイントです。

本稿では、ベターホーム協会・企画部の松田佳子氏(企画広報課長)にご協力を頂き、男性の厨房時間を1分でも増やすために今夜からできることを紹介します。

1. 料理初心者の男性が持つ「8つの特徴」

ベターホーム協会では、1991年から男性のための料理教室を開催していますが、1991年当時約350人だった男性受講者は、2016年には約6000人まで増え、そのうちの約4割強は60歳代が占めています。昔は、「男子厨房に入るべからず」と言われたものですが、家庭で料理をすることに関心を持つ男性は珍しくなくなりました。

しかし、初めて料理をする男性のなかには、日頃から料理をする女性にはわからない、思ってもみないところでつまずく人も多いのも事実です。ベターホーム協会では、20年以上に渡る料理教室の現場から、初心者の男性が持つ8つの特徴をまとめています。

【料理初心者の男性が持つ「8つの特徴」】

特徴(1)料理以前の基礎知識が少ない
料理用語が分からない。「沸騰するってどういうこと?」「油が温まったらって?」
特徴(2)「なぜそうするのか」科学的な理由の説明が、男性の論理的な感性に響く
調理科学に基づき「なぜそうするのか」の理由を説明すると、男性の頭にすんなり入っていく。男性は理屈から入り、頭で理解すると行動しやすい
特徴(3)あいまいな表現が苦手、数字が好き
「薄切りって何ミリ?」「こしょう少々ってどれくらい?」
「火が通るまで焼く」「さっと炒める」というのは何分何秒加熱すればいいのか知りたがる
特徴(4)マニュアル志向が強い
レシピに忠実に調理する。「5分ほど煮る」と書いてあれば、5分ぴったりに火を止める。ただし、3分たったところで焦げても、5分煮続ける。
特徴(5)計量が苦手
計量カップや計量スプーンを使った計量は苦手。
特徴(6)火加減の調節が苦手
火加減を細かく調整するのが苦手で、ずっと強火のままで焦がしてしまって失敗する人も。
特徴(7)並行作業が苦手
「~を煮ながら~をゆでる」など、並行して作業をするのが苦手。1品を仕上げてから次を作りたがり、鍋を2つ火口にかけると、1つは忘れてしまう。
特徴(8)後片付けが苦手
食器洗いも経験がなく、やり方が分からない人が多い。

(出所:ベターホーム協会プレスリリース「男の昼ごはんを発行しました」(2013年8月)から一部抜粋)

松田氏はこう話します。

「男性は女性に比べて、料理に関して仕入れた情報量、身に着けた技術、経験などが圧倒的に少ないことを理解することが大切です。普段から料理の本やテレビを一緒に見る、さりげなく料理教室を勧めるなど、夫が知識や経験を積めるよう妻の側から働きかけてみることも効果的です。ご自宅では、食材が少なくてもできるメニューを選んで、調理に必要な食材セットの準備までを妻が行い、夫に調理を体験してもらうのも良い練習になると思います」

料理が初心者の夫に妻が手ほどきするのであれば、上記8つの特徴を踏まえて、丁寧に疑問に答えながら教えつつ、長い目で成長を見守る優しさも必要だといえます。