結局、病院で死ぬのはなぜか?

自宅まで来て診療してくれるお医者さんが少なくなった理由としては、次のようなことが考えられます。

昔は具合が悪くなったら近所の開業医に診てもらうのが当たり前で、その医師が自然にかかりつけ医になり、往診を頼める関係を築くことができました。しかし今は大病院に行く人が多く、大病院は往診に対応しない。

昔は開業医のもとに通う患者ものんびりしていて、「往診に出ています」と言われれば文句も言わず待っていた。

ただし、今も開業医のなかには頼めば往診に来てくれる医師がいるようです。本連載の介護の体験記の項でも書きましたが、私の父がそうでした。父は近所のクリニックに長年通っており、その医師とは顔なじみ。そんなこともあって、寝たきりになった時、往診に来てもらいました。

しかし、そのクリニックは評判が良く、診療時間は患者が押し寄せる状態。それに対応する医師の激務を考えると、診療時間の合間に往診に来てもらうのが申し訳なく、何度も往診をお願いすることにはためらいがありました。

世間には、そうした意識から往診を頼めない人も多いのではないでしょうか。

その結果、病状の急変があると救急車を呼び、大病院に行くことになる。そして病院で最期を迎えるというわけです。

看取りは医師がいなければできません。医師不在で死亡した場合、不審死として扱われ、警察への届けが必要な事態になってしまいます。ともあれ、在宅医(在宅医療をする医師)が少ない、あるいは家族が往診を頼みづらいという状況が、自宅での看取りを難しくしたといえます。