日本は超高齢化社会に入り、独居老人は増加の一途をたどっています。さらにがんで死ぬ人が二人に一人になるこれからの時代、一人暮らしをするがん患者の数も増えると予測されています。果たして一人暮らしでがんになっても、自宅で死を迎えることは可能なのでしょうか。墨田区で在宅医療サービス「パリアン」を展開している川越厚先生に伺いました。
日本では独り身は明日の我が身
2000年に介護保険ができて以来、在宅医療が可能になりました。身寄りがない、家族がいても同居できない、本人が独居を希望するなど、さまざまな理由を背景に、独り暮らしの高齢者の在宅医療のニーズは高まりつつあります。
事実、私がクリニック川越(東京都墨田区)を開業して以来、16年間で2000人以上のがん患者を看取っていますが、そのうちの1割は独居の高齢者でした。
2010年には65歳以上の高齢者の一人暮らしは約480万世帯で、数十年前から右肩上がりの線を描いています。同年の夫婦のみの世帯は約620万世帯ありましたが、片方が亡くなると独居になる可能性が高いため、将来の独居老人の候補です。
施設が足りていないので、老人ホームは人が溢れているし、がん患者さんの場合、受け入れてくれる施設はさらに見つかりにくくなるといった理由で、自宅介護以外の選択の余地がなくなっているのが現状です。
独り身は他人事ではありません。多くの人にとって明日の我が身でもあるのです。元気なうちからそのときのことを考えておいてもよいでしょう。
高齢で一人暮らし、しかもがん患者が在宅医療をすることに対して、「無理でしょう」「万が一何かあったら」「お金がかかる」「一人で亡くなるなんて可哀想」などの声を聞きますが、私はすべての答えに「問題ありません」と答えることができます。実際、私のグループ「パリアン」ではこれらの問題をクリアして、独居の方への在宅医療を行っているからです。しかし、それにはいくつかの条件が揃っていないと難しいことも事実です。