留学の目的はクルチョ先生にピアノを習う

三宅義和・イーオン社長

【三宅】大学は東京芸術大学の音楽学部ピアノ科に入学されています。まさに、超難関大学ですが、入るためのテストというのは実技プラス学科試験ですね。

【横山】基本的には、実技のほうが重視されると思います。3次試験まであり、1次と2次が実技試験。もう、そこでだいたい合否が決まってしまいます。3次試験というのはソルフェージュなどの音楽の教養と、大学入試センター試験の国語と英語だけです。

【三宅】とはいえ、全国から英才が集まってくるわけですよね。やはり、合格を勝ち取るには、テクニックだけでなく、音楽の感性というか、人に感動を与えられる演奏家になれるセンスを持っているかが問われるのでしょうね。

【横山】どうでしょうか。18歳の時点で、はたしてそこまで見極められるのかどうかですが。

【三宅】しかも入学後、ロイヤルアカデミー・オブ・ミュージック(RAM、英国王立音楽院)の奨学生となり渡英されています。そもそも、ここはどのような学校なのか、また、どういった経緯で留学が実現したのでしょうか。

【横山】いろんな偶然が重なって、幸運にもそうなりました。王立音楽院自体はイギリスにいくつかある音楽大学のトップレベル校の1つです。私が高校3年生のとき、「ピティナ」というピアノの全国学生コンクールがあり、そこで金賞になりました。

その際、ヨーロッパで勉強できる奨学金を副賞としていただいたのです。私が希望すれば、いつでも留学できる状況だったのです。だけど、周囲の大人の人たちにアドバイスを求めると「日本の大学卒の卒業証書は取っておけ」ということで、芸大に進んだわけです。

【三宅】留学の権利が目の前にあったということですね。すると、留学に際してのIELTSのような大学・大学院留学の英語検定は受けましたか。

【横山】ありましたよ。ただし、合格点に達しないと、留学できないというのではなく、点数が足りなかったら「夏休み中に事前研修に来い」という話でした。イギリスの新学期は秋スタートですから。

【三宅】いま、横山さんは非常に英語が堪能ですね。普通の人は「さあ、英語をしゃべるぞ」となると、どうしても頭を切り替えるというか身構えてしまう。ところが、横山さんはまったく自然体です。日本語をしゃべるがごとく英語が出てくる。そういう人はなかなかいないですね。

ところで、イギリスでは世界的なピアノ教育者のマリア・クルチョ女史。クリストファー・エルトン氏に師事されています。そういう方の指導というのは、何か普通の指導者とは違う、特別のものがあるのですか。

【横山】はい、全然違うんです。そもそも私の留学目的というのも、クルチョ先生に習うことでした。クルチョ先生はイタリア人なのですが、ずっとロンドンに住んでいらしたので、それでイギリスを選んだわけです。もし、クルチョ先生がほかの国にいたとしたら、たぶん、その国に行っていたでしょう。