社内保育施設が敷地内にある安心感

「おはよう~」。朝7時半になると、次々に園児たちが登園する。マツダの本社敷地内にある社内保育施設「マツダわくわくキッズ園」だ。父親の姿も多い。「朝早くはお父さんが手を引いて連れてくることが多いです」。園長の福原かおる氏が説明する。

女性社員によるプロジェクトチームの要望で開園したのは2002年。園の名称も社内公募で決まった。開園時から園長を務める福原氏は、運営会社ピジョンハーツの社員として園児の成長を見守ってきた。現在は43人の園児を預かり、保育士10人、栄養士3人、看護師1人のスタッフがいる。

保護者の勤務時間に合わせて7時30分~21時までの長時間保育を行う。体調不良児室も備え、近くにあるマツダ病院との連携もする。企業内施設として恵まれた環境だ。

商品本部の山下晶子氏が、年中組の次女・穂乃佳ちゃんを連れて登園してきた。現在は中学2年になった長男、小学5年の長女も、同園に預けながら仕事を続けたという。

商品本部 山下晶子氏。1974年生まれ、97年入社。3児の母。3人とも、敷地内にある社内保育施設に預けながら働き続けてきた。「上は中2から、下は4歳まで。3人の子どもを預けて働いてきました」

「同じ敷地内にある安心感は大きいですね。何かあったときも『ちょっと託児所に行ってきます』と抜け出せますから。戻った後で、上司も『どうだった?』と気遣ってくれます」

設置して13年。子育てを理由に退職する女性社員も激減したという。

以前に比べて働く環境が改善されたマツダだが、まだ長時間労働は残る。育児中で勤務時間の限られる【前編】で紹介した開発エンジニア・伊東氏は、「子育てとの両立で大変なのは、お迎えに行って18時に帰宅して19時に食事。洗濯をして、子どもをお風呂に入れて21時には寝かせる。その3時間がバタバタです。その中でいかに子どもと対話していくかが課題」と話し、「バリバリ働きたい気持ちはあるが、それがかなわない中で管理職をめざす将来像は今のところ描けていません」と本音を漏らす。