一人で仕事を抱え込まない「見せる化」を促す
会社側もケアはしている。伊東氏が「見識の広い人」と信頼を寄せる上司の中井英二氏は、「伊東さんは働く時間が限られる中、残業してここを詰めようとするのではなく、効率的に時間をやりくりして頑張っています。努力家で、上司の私が『C』ライセンスなのに、『A』を持つのだから素晴らしい」と評価する。
「チームで仕事をしているので、どのエンジニアにも一人で仕事を抱え込まない『見せる化』も促しています。メンタル面の変化については、『週報』などで書かれた内容も参考にして対応します」(中井氏)
女性陣からは「マツダは残業ありきで仕事が進んでいく典型的な日本の会社」との声も上がるが、会社側も制度を整え、残業を減らす努力を続ける。
広島本社を取材したのは水曜日。取材後に乗ったタクシーの運転手さんが「今日はマツダの『定時退社デー』だから、18時前からこの道は混みますよ」と話す。ほかにも、コアタイムのない「スーパーフレックスタイム勤務」なども導入し、約8割が利用している。
「2020年に女性幹部社員数を現在(13年度比)の3倍に」を掲げたマツダにとって、労働時間のさらなる削減が、女性活躍の推進にもつながる。
「女性の背中をもう少し強く押す」と話す常務の藤賀氏に、以下の質問を投げかけたら、こんな答えが返ってきた。
「活躍する女性がもっと増えたら、マツダはどう変わりますか?」
「もっとお客さまに近づける、自動車メーカーになると思いますね」
撮影=遠藤素子、藤井泰宏