「女性が仕事を続けるうえで障壁があれば、それを取り除く」――。マツダは早くからこれを実践し、女性たちの笑顔は生き生きしている。しかし、以前はそうではなかったという。女性が活躍するきっかけとなった出来事とは?
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言いすぎたと後で反省するくらい、上司にも率直に提案する
取材した中で最年少が26歳の芦原友惟奈氏。主にSUV車全般を担当し、シートの開発業務に関わる。車種のコンセプトに合わせたシートの性能目標を立て、ドライバーの座り心地や操作性を意識しながら柔らかさ・形状・表皮材を組み合わせて開発する。
「開発にあたっては、上司にも率直に提案をするようにしています。『意見を出し合う』『耳を傾けてくれる』企業風土があります。たとえば『シートの柔らかさ』については、どの素材を選ぶか? ウレタンだったら硬度や密度のバランスが要素として関わります。日々やりがいを感じていますが、なかなか仕様が決まらず、最終に近い段階で関連部署から辛口のコメントを受けるときはツライですね。でもクルマの世界観とシートはリンクするので、他部署からの意見は大切です」
2012年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」にはマツダの「CX-5」が輝いた。
「開発陣の一員として参加できたのはうれしかった」と明るく語る芦原氏。普段は作業着で仕事をする本人のモットーは「作業着脱いで2割増し!」。仕事中はオシャレと無縁なので、アフター6や休日はファッションもメイクも気合を入れて楽しむ。
こうした女性目線を開発に取り入れるマツダだが、女性向けのクルマを開発するのでは決してない。
「誰にでもストレスなく運転できる」のが目指すところだ。たとえば女性ドライバーの中には、前かがみになって運転する人がいる。理由の一つが、シートが長すぎて膝下が窮屈なことだ。でも単純に短いシートを採用すると、身長の高い人は膝下に空間ができて運転中に疲れてしまう。そこで思案の末に「CX-3」や「デミオ」で導入したのが、振動吸収ウレタンという素材だった。大柄な人が座ると沈むのでシートが長く使えて、小柄な人では反発するので沈みこまないという。バリアフリーではなく、誰でも使えるユニバーサルデザインの発想と同じだろう。