さて、予定をあまり詰め込みすぎると、自ら直接現場を見る時間がなくなり、すべてが机上論に終始することになってしまいます。そこで、スケジュールに必ず「フリータイムを設ける」ことを常に心がけています。

フリータイムは、ホテルのビジネスが一番忙しい時間帯に設けています。早朝、朝食時、ランチの時間、そして宿泊のお客様が外出から戻る夕方の早い時間帯がそれに当たります。各時間帯に約30分~最大1時間。1日トータルで2~3時間の空白を確保しています。

お客様と直接会ったり、シェフと話したり、現場メンバーの考えや動きを把握することができますし、突発的な事態への対応も可能になります。

たとえば突然、私に「会いたい」と希望されるお客様にどう対応するか。私の空き時間にお会いできればいいのですが、お客様のご希望に沿えない場合は、自分のスケジュールを変えます。

ホテルはホスピタリティ産業。お客様を最優先に考えなければなりません。

英国人と日本人、時間感覚の違い

このホテルでの滞在にいかに満足したか、もしくは接客にどんな問題を抱えているかを、お客様は生の声で私に教えてくださいます。どんなご用件かは聴いてみるまでわかりませんが、スタッフではなく私を指名しているからには、何らかの理由があるはず。あるお客様からは、20分くらいご自分の息子さんのキャリアについてのご相談を受けたこともあるくらいです。

ヒルトン東京総支配人 マイケル・ウィリアムソン氏

私は英国人ですが、時間に対する感覚について、基本的に英国人は日本人とよく似ていると思います。時間に対する正確度では、日本人のほうがより厳密でしょう。

しかし、日本人との違いを感じる点が一つだけあります。結論に達するまでの時間の長短です。物事を話し合って決定するまでに、日本人のほうがより多くの時間をかけていると感じます。

それに対し、我々英国人は、何か事が起こった場合、仮定をベースに決定を下すという慣習があります。こうすれば時間の短縮が可能です。

だからといって、このやり方をスタッフに押し付けることはしません。自分が日本に来ている外国人だということを、常に忘れないようにしています。