手紙の差出人は、地方キャバクラ店長の碇策行。両親に棄てられた過去を持ち、大人に裏切り続けられた経験から、息子が生まれた日、「キミだけは裏切らない」と誓う。子供の可能性を信じないのも裏切りであると考え、「決断」はすべて子供にまかせ、ヒントだけを与えた。どんなときも急かせず、子供自身の決断を待った。妻も水商売という家庭環境で、家族で一緒に夕飯を食べられるのは日曜日だけだったが、息子は現役で東京大学に合格する。現在、息子の卒業した学校で『保護者入門』というセミナーを受け持っている。自身が保護者らの相談に乗る中で感じた疑問を、受取人にぶつける。(近著に『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』がある)

手紙の受取人は、無期懲役囚の美達大和。2件の殺人を犯し、現在長期刑務所に服役中。いわゆる本の虫で、これまでに数万冊を読了。現在でも月に100~200冊を読み漁る。郵送での原稿のやりとりで、これまでに10冊の本を出す。思春期のきょうだいとの、実際の文通をまとめた『女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』は根強い人気で、発売から3年が経った今でも、読者から受取人への人生相談、勉強の悩み相談の手紙が後を絶たない。(2016年7月文庫版が小学館より発売)

親が子供を心配する話ばかりを聴く

▼「キャバクラ店長から手紙」
『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』(プレジデント社刊)

はじめまして、碇 策行(いかり かずゆき)と申します。突然のお便り失礼いたします。

美達さまにこうして手紙を書かせていただいたのは、「子供たちの可能性、能力を引き出すにはどうしたらよいのか」についてお考えをお聞きしたかったからです。保護者のみなさんから話を聴いていると、

「勉強をしない」
「成績が上がらない」
「やる気がない」
「将来について考えているようには見えない」

など、お子さんを心配する話ばかりになります。

私自身は、知る楽しさ、出来る楽しさを味わえば、学ぶことが楽しくなる。学ぶことが楽しくなり、学び続ければ、学力がつき、おのずと成績も上がる。失敗しても大丈夫だと見守っていれば、やる気を持って何事にも挑戦できる。そういうように考えて、子育てしてきました。