しばらく経って、今回お招きくださったレミーマルタンの方々と夕食を共にした。レストランの中には、アメリカの有名俳優もいらした。
「本当にみんなが来るのは、午前3時過ぎだよ」と創業家の男性。「スターたちは、お付き合いでいろいろなパーティーに出る。自分で楽しもうとホテルのバーに姿を現すのは、もっと遅くなってからなんだ」。
本当は午前3時まで起きていて、くつろぐスターの様子を見たかったが、翌朝早く起きて海岸をジョギングする予定もあり、諦めた。
初めて目の当たりにしたカンヌ国際映画祭の様子。やはり、現地に行かないとわからないことがたくさんあった。
まず、カンヌという土地の持つ伝統、力である。何もないところにいきなり映画祭を立ち上げるのは、難しい。
もともと、カンヌやニースといった南フランス、それにモナコには、世界中のセレブが集って楽しむという文化の蓄積がある。カンヌ国際映画祭の華やかな雰囲気も、もともとのセレブ文化の裏付けがあるから、浮ついたものにならない。
加えて、一番大切な、映画という芸術を追求する姿勢の厳しさ。世界中の映画人が、カンヌという晴れ舞台を目指して集まってくる。その競争の容赦なさ、苛酷さがあってこそ、映画祭としての質が保たれている。
容赦ない競争と、セレブ文化の蓄積。これが、カンヌ国際映画祭の「成功の方程式」。
アカデミー賞授賞式の輝きも同じ仕組みでできているように思う。日本人にとっても、参考になるのではないか。