縦半分に折ってノートに折り目
政治家などの取材では、メモが取れないオフレコのことがあるし、政局が微妙なときには、「えっ、メモを取るのか、おまえ」と相手が構えてしまう場合がある。きわどい話であれば、メモ帳を出すタイミングも考えなければならない。
「記者の中には手の甲へボールペンで実際に書く者もいますし、指でなぞる人もいる。後から皮膚の感触で内容を思い出せる才能があるのでしょう」(唐澤氏)
メモといえば、官庁を取材する記者の中には、深夜にゴミ箱をあさって、担当者の書き損じのメモやプリントミスの書類を持ち出す者もいたという。担当者が席を外している間に、パソコン画面をのぞき見するのはよくあることだという。
ところで、メモ帳はどんなものを使っているのだろうか。
「線にとらわれずどんどん書けるように真っ白なモノを使います。意外とコピー用紙が書きやすい。ペンの滑りも大事ですが、紙とペンとの相性も大切です」(唐澤氏)
メモは横書きに取る人が多いと思うが、A4やB5のノートだと、どうしても右側に余白が出てしまいがち。それを避けるために縦に分割の線を入れて、左の段から右の段に書いていく方法もある。ページをめくる回数が増えるとそれだけ時間をロスすることにつながるし、スペースの有効活用にもなる。三隅氏が話す。
「ノートを縦半分に折って折り目を付けています。インタビューや記者会見のときは、左に質問事項、右に答えを書いていくと便利なんです」
政治家の囲み取材などでは押し合いになるケースもあって、B5のノートでは邪魔になり、手のひらサイズのメモ帳が使いやすい。
筆記具は本人の使いやすいモノなら何でもいいと両記者は話すが、スピードが勝負なだけに、滑りのいいものを選ぶという。ただ、同じ銘柄のボールペンでも、それぞれにクセがある。気に入ったものに出会うと唐澤氏は、できるだけ長くもたせるために取材用にとっておく。メモを取るためには、そこまで書き味にこだわるものだという。