陰陽のバランスを取り戻すために

現代の経営は度を越した能率・効率の追求により、戦争以上に人の心を痛めつけていると私は思う。敗戦直前の昭和19(1944)年9月まで私は東京で育ったが、当時の人はみな大らかだった。戦争中よりもむしろ、戦後に進んだ経済の効率化が人の心を踏みにじって壊してしまい、犯罪や病気などの問題を引き起こしているのではないかと思う。

だから私は、あえて非効率であっても、人の心を穏やかにするために掃除を始めた。会社を起こした昭和30年代当時、自動車関連の社屋はみんな汚かった。私の会社もそうだった。だからいちばん汚いトイレの掃除から始めて、バラックの社屋をたった1人で徹底的に掃除した。