原因はファイル名が似ていたという、きわめてレベルの低いケアレスミス。本来の見積価格20万円ではなく、仕入れ原価16万円が先方に渡ってしまいました。午前11時に送信したのですが、午後1時の段階でT物産からはまだ何のレスポンスもありません。

ここでA君がすべきことは、上司であるB課長への速やかな報告。まず、課長の目をしっかりと見て「大変なミスをしてしまいました」と伝えます。この時点で相手の不安を最大にしておけば、以降の説明の際、「それほど大変なことでもなかった」と思わせることができます。

次に、ミスにどう対処するかを話します。この段階での選択肢は3つ考えられます。得意先に対し、(1)改めて通常価格で正式な見積もりを出させてもらう。(2)通常から10%引いた価格で出し直す。ただし、10%を引いたことは得意先に告げず、それが通常価格のようにする。(3)送ってしまった価格を正式な見積もりとする、というもの。

それぞれのメリットは、(1)は得意先が了解してくれれば、適正利益が確保できる。(2)は得意先に対し「この会社はいつも利益を10%しか上乗せしていない」と思い込ませることができる。(3)は先方に得をしたと感じさせることでしょう。

この3つの案は、失敗の報告と同時に提案しなければなりませんので、じっくり案を練っている暇はありません。しかも提案後、早く判断してもらう必要があります。コツは、理想的な解決策と最悪を覚悟したもの、そして、その中間の案の3つを用意することです。

この場合、その後のビジネスを考慮すれば(2)が落とし所となりそうですが、自分の意見は簡単に述べ、最終判断は上司にしてもらいます。上司が納得できる解決策が盛り込まれていれば「こいつできるな」となり、あなたの株が上がります。そして、上司が「これでいこう!」と決めたら「では、先方に連絡します」と行動に移せば「しっかりやってくれ」となるのです。