ではどうすれば相談受けが上手になれるのか。その具体的な方法をお教えしよう。深い悩みの相談にはまず「30分、徹底的に相手の話を聞く」ことをしていただきたい。しかし、試してみるとわかるのだが、これが実に難しい。なぜなら私たちにはすでに、アドバイスしたり自分の意見を言うという“支援者癖”がついてしまっているからだ。

この癖を抑えて話を聞くための、2つのコツをお教えしよう。まず1つ目は「うなずき」。相手の話に合わせて小さく(“興味津々”のメッセージ)、時折大きくのみ込むようにゆっくり首を縦に振る(“納得”のメッセージ)のがポイントだ。2つ目は「要約・質問」。話を聞いているうちに自然と疑問が湧いてきたら、質問してもかまわない。ただし必ず相手がこれまで何を言ったのか繰り返し(要約)、それから質問をすること。「~だったんだね。それからどうなった?」と時折挟むと、“しっかり聞いている”というメッセージを送ることができる。30分これを続ければ、相談者はあなたを味方と認識するだろう。

この状態でのアドバイスは、驚くほど相手の思考を働かせ、問題解決に向かうパワーをよみがえらせる。ちなみにアドバイスする際は「私だったら、~するな。君はどう?」と「アドバイス+どう?」の形で、10秒以内に収めるとより効果的だ。

以上のように、30分話を聞く+アドバイスで、トータル1時間は相談者と向き合うことをお勧めしたい。多忙な中で相談にこれだけの時間を取るのは非効率だと感じるだろうか。しかし相手との信頼関係を失うのと、どちらが建設的だろう。とにかく、日々少しずつでも試してほしい。きっとその効果に、コストパフォーマンスのよさを納得してもらえるに違いない。

心理カウンセラー 下園壮太(しもぞの・そうた)
1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の「心理幹部」として多くのカウンセリングを手がける。著書に『1時間で相手を勇気づける方法』(講談社)などがある。
(構成=中尾美香 撮影=相澤 正)
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