原発事故の影響を受け、3月16日、海外高級ブランドの直営店が一斉に休業。百貨店の売り場も閉鎖された。営業中止を決めたのは、LVMHグループに属するルイ・ヴィトンやフェンディ、ディオール、グッチグループのブシュロンなどだ。
高島屋の広報・IR室広報担当課長・内山勘一氏は言う。
「とりわけ対応が早かったのがフランス系のブランドですね。14日、15日も交通機関の乱れで通勤できない販売員が多く、売り場はなかば成立しない状況でしたが、16日からの正式なクローズはフランス政府の勧告を受けて決定したようです」
高島屋の場合、11日からの1週間で関東地区の全体売り上げは前年比58%減となったが、海外特撰ブランドに限っていえばマイナス幅はさらに大きく70%減。翌週も全体が44%減に対して、特撰ブランドはやはり70%減となった。
もっとも22日からは各ブランドとも営業を再開。彼らの日本からの撤退を心配する声もあったが、杞憂に終わったようだ。
「日本は彼らにとって大事な市場。実際、海外から様子を視察にきた幹部もいますし、ある外国人トップは休業を詫びて回っていました」
こう語るのは、2010年までイッセイミヤケの社長をつとめ、海外ラグジュアリーブランドの動向に詳しい太田伸之氏。今後を次のように見る。
「痛いのは外国人観光客の減少です。ここ数年、ブランドの売り上げを支えていたのは中国や香港、台湾などからのアジア系ツーリスト。震災の翌日、百貨店の上の階で買い物をしていたのは中国人ばかり。彼らのブランドの売り上げに占める割合は3~4割にも達していました。とくに影響が大きいのは時計などの宝飾品ブランド。ヴィトンはすでに中国に40店舗ほどありますが、時計のレアなブランドは少ないのと、免税のメリットが大きいのが魅力。彼らが国内で高級品を買うと、いわゆる“贅沢税”がつきますから」
日本での海外ブランドの存続は、自粛ムードによる買い控えより、中国人が戻ってくるか否かに左右されそうだ。
※すべて雑誌掲載当時