冠動脈疾患の発生率は2倍以上
ただ、せっかちでも「仕事を早めに始めるせっかち」は効率がよいという。
「人間には、与えられた時間を目いっぱい使って仕事をしようとする習性があるので、いくら締め切りまで余裕があっても、タイムリミットが近づくまで何もしなかったりします。しかし、仕事を早めに始めて作業が少しでも前に進むと、『目標勾配』といって、徐々にやる気が上がっていくのです」(一川教授)
早めに仕事を始めると、心にゆとりも持てるし、モチベーションが上がるので楽しみながら進められる。最もよいのは、早めに仕事を始め、1つの仕事の中でも細かく締め切りを定めて、休憩をはさみながら一定のペースで仕事をすることだ。そういった「締め切りに捉われない働き方」がもっとも効率的で、短期集中ではなく分散して進めることで、イノベーティブな仕事をする上でも効果があるという。
健康面ではどうだろうか。「せっかちは心身に与える悪影響が大きい」と話すのは、『病気になりやすい「性格」』(朝日新書)などの著書を持つ東北大学大学院医学系研究科の辻一郎教授だ。
「競争心が強く、一度に多くのことをやろうとする、性急でせっかちな人は“タイプA”という行動パターンに分類されます。早食い早歩き、食べながら別のことをしようとする、話すスピードも早いような人です。ある仕事をこなしても、『次はもっと早く』と思ってしまう。時間の切迫感は強くなるばかりで、自分で自分を追い込んでしまい、そのストレスが心臓発作や心筋梗塞など、冠動脈疾患の発生率を上げるのです」
1960年代にアメリカ人の医師らが行った調査によると、冠動脈疾患の発生率は、タイプAはタイプB(タイプAではない人)の2倍以上だった。