【田原】実用化が着実に進んでいますね。商品としては、やっぱり衣料品が中心ですか。
【関山】現在、ほかにも自動車部品の小島プレスさんと提携して自動車に使えないかと研究しています。
【田原】なるほど。いま自動車メーカーは炭素繊維を車体に使おうとしていますね。クモの糸は、その代わりになりうる?
【関山】少し違います。クモの糸は炭素繊維と補完関係にあります。炭素繊維はとても硬いので自動車のシャーシに向いています。ただ、硬い素材は衝撃を吸収しにくいので、事故があってぶつかったときにもろい面があります。一方、クモの糸は衝撃を吸収する性能が高い。両方を組み合わせれば、硬くて衝撃にも強い樹脂ができます。ですから、クモの糸の実用化が進めば炭素繊維の普及も加速するという関係ですね。競合するとしたら、むしろ金属でしょう。自動車や飛行機などの輸送機器は、安全性を高めるとともに、軽量化して燃費効率を高めることも求められています。鉄の比重は7.8ですが、クモの糸は1.3くらい。将来は金属の代わりに使われる機会が増えていくはずです。
【田原】将来に期待大ですね。いま競合といえる会社はあるのですか。
【関山】サンフランシスコに同じようなことをやっているベンチャーがあります。でも、私たちのほうが1.5歩か2歩くらい先を行っています。