「短期間」「安い」……こんな謳い文句に注意
それでは歯科医はどうやって選べばいいのか。日本に矯正歯科学会は3団体あり、それぞれが認定医や専門医を認定している。これらはある程度の目安になるが、歯科医が制度に頼ることなく研鑽を積んでいる場合も考えられる。医療ジャーナリストの増田美加さんは、「歯科矯正は専門的なトレーニングが求められますが、クリニックの看板に『矯正』を掲げるのは自由。歯科不況の現在、知識や技術が足りないまま矯正を始めている歯科医も多い」と指摘する。
「日本人は骨格上、7~8割は矯正治療に抜歯が必要と言われています。それなのに患者の歯を見ないで『抜かなくて済む』と謳っている歯科医には気をつけたほうがいいでしょう。また矯正は本来、時間とお金がかかるもの。『短期間』『早く治る』『最新機器』など、耳当たりのいい言葉を並べたり、顧客ほしさに『審美歯科』『インプラント』『歯周病治療』など、看板がやたら多いクリニックも注意すべき。選ぶ第一のポイントは、歯科矯正を専門にしていること。さらに最初の相談で、全体の期間と費用を提示してくれるところは良心的と考えていい」(増田さん)
矯正と向き合う意識について、武内さんがアドバイスを送る。
「本人が思っているほど周囲は矯正をしていることについて意外と気にしていません。恥ずかしいと考えて笑わないように努めるのは、かえって不健康。自分の理想に近づくため、『この期間だけ』と考えて、堂々と取り組んでほしいですね」
前出のさくたろうさんは、矯正体験を女性に語ったところ、「歯に美意識があるなんてすごい!」と好反応だという。日本で大人の矯正が身近になる日も近いかもしれない。
(PIXTA=写真)