独自コンテンツをつくらない理由

【田原】いま新聞の部数は下がっていますね。既存のニュースメディアはネットに活路を求めようとしていますが、それも苦戦している。鈴木さんのところみたいに収益化に成功したところが、将来、自分のところで取材してコンテンツをつくるという方向にはいかないのですか。

【鈴木】目下、スマートニュースで独自に記事をつくるということは考えていないです。自分たちでコンテンツをつくると、どうしても自分たちのコンテンツを応援したくなって、ニュートラルではなくなってしまいます。それよりも、いい記事をつくってくれる組織やチームをサポートしたほうが業界全体にプラスかと。

【田原】鈴木さんのところが入り口になって、既存のメディアにお金が還流する仕組みをつくっていくということですか。

【鈴木】はい。ただ、既存のメディアだけではありません。最近はデパート的な大きなメディアだけでなく、数人でやっているブティック的なメディアが続々と登場しています。そうしたメディアが成り立つようなシステムをつくっていきたいなと。

【田原】ところでスマートニュースは早い段階でアメリカに進出していますね。どうしてアメリカ?

【鈴木】理由は2つあります。1つは、個人的な気持ちです。約15年前、初めてシリコンバレーに行ったときにアドビの創業者の息子さんに会いました。彼は社会を変革するというビジョンに向かって真っ直ぐに進んでいて、非常に衝撃を受けた。アメリカにはビジョンの力を信じている人がたくさんいるというのが僕の原体験で、いまでもアメリカで仕事をしてみたいという思いは強いです。

【田原】もう1つは?

【鈴木】スマートニュースを世界中の人に使ってほしければ、アメリカから始めるのが近道です。市場として大きいし、ニューヨークは世界のメディアの中心。それに世界的に成功しているIT企業の9割以上がアメリカ企業で、人材も集まっています。