【田原】アメリカで成功するには、何が必要ですか。

【鈴木】まずプロダクトの力です。アメリカはプロダクトのイノベーションが速いので、僕らもプロダクトをどんどん洗練させていく必要性を感じています。あとはニュースの再定義。現状、アメリカではニュースを見るメディアとしてフェイスブックが圧倒的に強い。フェイスブックはパーソナライズされたニュースのサービスでしたが、3~4年前から伝統的なニュースも交ぜるようになってきた。僕らは彼らと違うアプローチで、新しいニュース観を打ち出していきたいと考えています。

【田原】京セラの稲盛和夫さんに取材したとき、おもしろい話を聞きました。彼は日本の企業にセラミックを売ろうとしたのですが、最初は相手にしてもらえなかった。それで本場のアメリカに売りに行った。アメリカはテストだけはしてくれるから、チャンスがあったんですね。結果、テキサス・インスツルメンツという大きな半導体会社が買ってくれて、京セラは世界的企業になった。鈴木さんがやろうとしていることは、稲盛さんと同じだね。

【鈴木】そのエピソード、すごく励みになります。日本のインターネット企業のアメリカ進出も、成功事例が1つ出れば、大きく流れが変わる気がしています。

【田原】最後にもう1つ教えてください。スマートニュースが成功したら、ニュースは「なめらか」になるのかもしれない。その次に鈴木さんがなめらかにしたいものは何ですか。

【鈴木】いま、興味を持っているのは都市のデザインです。20世紀は国民国家の時代でした。しかし21世紀は、都市というカーネルがネットワークでつながっていく時代になる。

【田原】都市の時代ですか。インターネットが発達したいまは、どこに住んでも同じじゃないんですか。

【鈴木】じつは僕もそう考えていました。どこにいたって作業ができる環境になったのだから、スマートニュースのオフィスは田舎にあったっていいはずです。でも現実問題、僕たちのオフィスは渋谷にある(笑)。

【田原】どうして渋谷なの?

【鈴木】クリエーティビティは顔と顔を合わせたときにいいものが生まれます。情報はどこにいても取れるようになりましたが、それゆえ逆にリアルなコミュニケーションの価値が際立つことになり、人と人をつなぐ都市の力が重要なものになってきた。だから僕たちは都市を離れられないし、これからは都市の力がますます強くなっていくと思います。