立つときやそこからお辞儀をするとき、手を体の前で組みなさいと教えられたことはありませんか?
現代マナーの指導でよく見受けられますが、これは間違いです。
手を前で組むと、肩が前に出て胸がすぼまります。腕を自然に垂らせば、胸も自然に開くのですが、これだとそうはなりません。手を前に組むことで謙虚さを表し、つつましく見えると思われているようですが、逆に妙にへりくだった態度にも映ります。手を組むのは、そもそも不安感から逃れて安堵を得ようとする動作で、緊張感や集中力を薄れさせるものです。
最近の秘書検定でも女性の場合は、手を胸の下あたりで組むようになっているようですが、どうでしょう。謙虚というより、むしろ横柄な印象を受けないでしょうか。諸外国の要人や皇族方で、立つときやお辞儀をするときに手を組んでおられる方はいらっしゃいません。人間の腕は、体の横についているのですから、自然に垂らせば体の前で手を組めるはずがないのです。
このような自然な動きに反し、心の通わない体構えで人と接するのは、本来は失礼にあたることなのです。
※本連載は書籍『一流の人はなぜ姿勢が美しいのか』(小笠原清忠著)からの抜粋です。