たとえばコメなどの生活必需品は価格弾力性が小さく、価格を変更してもほとんど需要は変化しない。対して、贅沢品は価格の変動によって需要が大きく変化し、価格弾力性が大きいと考えられている。
非喫煙者からみれば、たばこは贅沢品であり、決して生活必需品ではない。しかし一部の愛煙家が「値上がりしても禁煙しない」と断言していることは、その人にとって、「たばこは生活必需品に近い位置付けにある」と解釈できる。
では、もっと大きく値上げするとどうなるか。大学の研究者らによる推計では、1箱400円になった場合に禁煙を考える人の割合は約20%だが、1箱500円では約37%に跳ね上がる。600円では半数を超えて約57%、800円では約86%にも増加する。
まさに吸いたい気持ちと懐事情の兼ね合いが、禁煙に動くかどうかの分かれ道。葉たばこ農家や販売店など、たばこ産業への影響も考えなければならないのだろうが、本気で健康増進を狙うなら、もっと大きな値上げをしたほうが効果的だろう。
とはいえ、禁煙を考えたとしても必ずしも成功するわけではない。非喫煙者の立場から言わせてもらえば、愛煙家自身の健康だけでなく、受動喫煙の問題にも目を向けてほしいものだ。
環境問題については排出権取引が行われているが、たばこについても「喫煙権取引」を導入するというのはどうだろう。たとえば1人あたり年間100箱など、すべての成人に一定の枠を与え、その権利は自由に売買できる。吸わない人はお小遣いが入るし、愛煙家も気持ちがラクになるかもしれない。
有害性を示す新たな研究結果が発表されたり、愛煙家は異性にもてないというアンケートが公表されれば、たばこをやめる人が増えて喫煙権が値下がりする可能性もある。ともあれ、たばこについて考える機会が増えることは間違いないだろう。