「07年度からの特徴で、広告文の読み取り問題が毎年出題されるようになりました。英語で情報を集めて、その内容を理解し、さらにそれを活用する能力を問うもので、OECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査『PISA』と同じタイプの問題です。より実用的な状況における、英語の運用力が試されるようになったのです」

こう解説してくれたのは教育教材開発部統括チーフの下松淳子さんだ。

国公立大学の2次試験はどうなっているのか。最難関の東京大学だと、さぞかし難問奇問が出てきそうな気がするが、信実さんは「とてもバランスのとれた問題を出題しています。問題の語彙レベルを見ても、中学と高校で習ってきた3000語レベルで約9割を網羅できるのですが本当の思考力や表現力を問う工夫された問題が出題されています」と話す。


東京大学 2013年度 前期日程試験―英語

その代表例が13年度の前期日程の問題(写真を参照)。2人の人物が写った写真を見て、互いの会話を想像して、英語で書くもので、語数の制限もある。まさしく英語で考え、英語で答える能力が問われている。単なる和文英訳の受験勉強だけでは対応が難しいだろう。その他の国公立大学では長文を聞いたり読んだりし自分の意見を書くような技能統合の問題も出題されるようになったそうだ。

いまだ私立大学は旧来型がメーン

では、私立大学はどうなのか。信実さんは「長文読解問題や文法問題が中心ですが、慶應義塾大学、上智大学、青山学院大学などは、速読に近いペースでないと対処できないような長文を出題しています」という。下松さんが一例として14年度の慶應義塾大学経済学部の2つの長文問題の語数が、804語と1658語もあったことを教えてくれた。

昨年度の東大の全学部の受験者数は9086人。対して慶應のそれは4倍以上の3万8739人だ。東大のような自由に英文を書かせて英語の思考力を問う問題を出すと、採点に人手や時間がかかる。そのコストを考えたら、旧来の問題で一気に採点したほうが、大学の“懐具合”が楽になるということも微妙に関係していそうだ。