【田原】どういうこと?

【谷口】「miuro」がヒットしたので、さらに安いモデルを大量生産しようと、ベンチャーキャピタルから十数億円を集めました。ところが08年のリーマン・ショックでベンチャーキャピタルが潰れかけ、わが社も資金が底をついてしまった。このままでは倒産するというとき、目に留まったのが「miuro」の自律移動技術です。この技術を自動車につければ自動車メーカーが買ってくれるのではないかとひらめいて、ミニチュアの自動運転車をつくった。それがロボットタクシーの原型です。

【田原】ごめんなさい。ちょっとよくわからなかった。自動運転のミニチュアカーを自動車メーカーが買うって、どういうこと?

【谷口】自動車メーカーは自身で運転支援や自動運転の研究をしています。実験は本物のクルマを使ってテストコースでやりますが、実験にはコストがかかるし、いろいろな開発チームがあるので順番も簡単に回ってこない。そこでテストの前に小さな模型でシミュレーションするのですが、その実験機として私たちの自動運転車を売り込んだのです。

【田原】実験機?メーカーは実験用のミニカーも自分でつくれないの?

【谷口】つくれると思いますが、彼らにしたら道具を買う感覚です。たとえばクルマの設計にはCADが使われます。でも、トヨタは自社でCADのソフトをつくらないで、他社から買ってくる。そのほうが早くて安いからです。自動運転の実験機も同じです。私たちから買ったほうが、メーカーも楽ができます。

【田原】なるほど。それでメーカーは買ってくれたの?

【谷口】09年に10分の1の模型を100万円で売り出したところ、ほぼすべてのメーカーが買ってくれて、一番厳しい時期を何とか乗り越えることができました。この実験機はいまも売れていて、累計で400台以上売れています。その次が、もう少し大きいサイズの1人乗りのロボットカー。これは500万円で、40台ほど売れています。原付のナンバーをつければ公道も走れるので、自動車メーカーや部品メーカーのほか、大学や自治体が小型モビリティの研究用に購入するケースも多いです。

【田原】ミニチュアカー、1人乗りときたら、次は普通車ですね。

【谷口】普通車のロボットカーは、人とお金の体制が整った12年から販売しています。本体はプリウスを使っていますが、やはり実験車両として自動車メーカーが買うことが多いので、その場合はメーカーさんのクルマにセンサーやコンピュータ、ソフトウエアを載せてお渡しします。価格はセンサーの数によりますが、だいたい3000万~5000万円。いままで30台ほど売れています。