着々と進む準備どうなる衆参同日選
2016年の政界は、日本の将来を決める激動のときを迎える。首相就任3年を超えた安倍晋三首相が悲願の憲法改正を果たすため、いよいよ衆参同日選挙という「大博打」の準備に入ったからだ。しかし、対する野党も共通政策づくりなどで応戦態勢を整えている。勝てば憲法改正、負ければ野党転落・党分裂という天下分け目の戦で、首相は勝ち鬨をあげることができるのか。眼前にそびえる「2つの壁」のカギを握るのは、菅義偉官房長官と橋下徹前大阪市長だ。
「俺は次の参院選までは首相官邸にいる」。いまや安倍政権の大番頭として君臨する菅氏は、口癖のようにこう漏らしてきた。そして、最近では「党務をやってみたい」と語り、全国の選挙区事情を分析することに余念がない。もちろん、「党務」とは自民党幹事長ポストを意味する。
しかし、キーマンである菅氏の起用法こそが1つ目の「壁」になっているのだ。その理由は、17年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入されることが決まった、「軽減税率制度」をめぐる谷垣禎一幹事長ら党執行部との確執にある。財政規律を重視する観点から対象範囲の限定にこだわった谷垣氏らに対し、菅氏は公明党が主張する対象拡大プランを丸呑みするように恫喝。最後は「首相裁定」を強引に引き出して、執行部を屈服させた経緯がある。
菅氏を幹事長に据えれば、恩を感じる公明党との良好な関係を維持し、組織力をフル活用して衆参ダブル選で勝利する可能性もゼロではない。だが、菅氏に嫌悪感を抱く自民党内の怒りが爆発し、党内政局が激化して首相が引きずり下ろされる恐れも捨てきれない。
首相は稲田朋美政調会長を育成したい意向で、政権の要である官房長官を経験させるシナリオを描く。政権安定に貢献してきたとはいえ、菅氏をいつまでも官房長官の椅子に座らせておけない事情もあるのだ。党幹部への起用で政局がスタートするか、それとも稲田氏への後継指名を諦めるか。菅氏の進路は政権の浮沈を握る。