もう1人のキーマンである橋下徹前大阪市長は、首相が憲法改正に欠かせないと見る人物だ。08年の大阪府知事就任後、8年間にわたって「橋下劇場」を巻き起こした手腕を首相は高く評価し、憲法改正に向けた国民的論議での発信力を期待する。

政界引退を表明後、国政進出への可能性は煙に巻く橋下氏だが、首相サイドは「衆参ダブル選ならば出馬してくるだろう」と見る。昨年12月19日にも首相と橋下氏は会談。首相が国政進出に期待感を示したのは、「ゴーサイン」の表れだ。

首相がダブル選を狙うのは、参院選が自らの自民党総裁任期である18年9月までの間に今夏の1回しかないためだ。改憲のチャンスはわずか1度だけ。衆院は自公両党で憲法改正の発議に必要な3分の2の勢力を確保するが、参院は両党を足しても29議席足りない。おおさか維新は現有6議席(改選1)と少数だが、橋下氏が出馬すれば相乗効果で改憲勢力が伸長し、発議に近づく可能性は高まると踏む。

とはいえ、野党の選挙協力準備は進む。共産党が安全保障関連法廃止を旗印にした連立政権「国民連合政府」構想を提唱し、民主党や社民党などとの選挙区調整に乗り出しているのだ。野党が候補者の一本化を進めれば、バラバラに散っていた票は1人に集まり、与党候補が野党結集の「壁」の前に苦戦を強いられるのは自明といえる。

事実上の与党と野党の一騎打ちになる選挙区は増えると見られるが、橋下氏のおおさか維新はその選挙区での候補者擁立に動くのか否か。「第三の候補」が出れば野党の集票は計算通りにいかないが、擁立を見送れば結果的には野党候補を利する形になる。

政権交代のリスクを抱えて思いに耽る首相。「憲法改正の最大のチャンス」「ワクワクする選挙になる」と今夏の選挙を表現する橋下氏は、その救いの神となるのか、それとも疫病神となるのか。日本の将来を左右する答えは刻々と迫っている。

(時事通信フォト=写真)
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