神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は、ミドル期の人は働き始めたときのことを振り返り、自分がこの会社に入社したことは、どんな意味があったのかと、じっくり見つめ直すことを勧める。
「実際は他の会社に採用されなかったからでも、あとづけでかまわないから、仕事をしてみてどんな意味があったかを見直してみることです。人は仕事を通じて発達し続けるし、会社はその意味で働く人が継続して発達していく舞台であり、学校でもあるのです」
では、なにを見つめ直せばいいのか。金井教授は主観的な3つの自己イメージの明確化だという。
1つめは、自分は何ができるのか、何が得意なのかという〈自分の能力・スキル〉。2つめは自分は何がしたいのか、何が好きなのかという〈動機・欲求〉。3つめが、何に価値を感じるかという〈意味や価値〉。
「それぞれ、他人がどう評価しているというのではなく、自分がそう思っているという自己イメージが大切です。まず、自分は何ができるのか。能力・スキルの評価は相対的なものですが、才能を持っていても、本人にとって重要ではないこともあります。自分が重要だと思い、うまくできると思っていることは何なのか、あらためて問うてみましょう。
次に、やはり好きでなければ続きません。ただ、人は得意なこと=好きなことと勘違いしがちです。例えば、英語ができる人は語学が好きだと思いがちだし、コンピュータが得意な人は機械が好きだと思い込みがち。でも、本当は語学ではなく、異文化の人とコミュニケーションをとることが好きなのかもしれませんし、機械ではなく、数学的な問題解決が好きなのかもしれません。うまくできることをやりたいことと思い込むことには気をつけたいところです」