今年8月、総合電機大手の三菱電機はイタリアの業務用空調メーカー、デルクリマ社の買収を発表した。
買収額は約6億6400万ユーロ(約902億円)と、同社にとって過去最大の買収規模だ。これは今後、欧州空調市場で戦うための足掛かりとなるM&Aと評価している。
三菱電機は創出したキャッシュを原資に、研究開発や今回のような企業買収など、積極的な投資を行っている。また、競合の日立製作所や東芝に売上高こそ及ばないが、昨年度の営業利益率は7.3%と2社を上回っている。バランスシートも実質ゼロ負債と強固である。
三菱電機の高収益を支えるのは、産業メカトロニクス部門のファクトリーオートメーション(FA、工場自動化を図るシステム)だ。同社は2020年度までに連結売上高5兆円以上、営業利益率8%以上という数値目標を掲げているが、そのうち産業メカトロニクスは売上高で30%、営業利益率で13%以上を目指している。
また、三菱の事業は多角化されており、全体のバランスが収益を支えている。多少伸び悩んでいるのは電力システムだが、電力自由化などによる事業拡大機会はこれからだろう。
個人的には、三菱の研究開発能力の高さに安心感を抱いている。あらゆる製品のコア技術となるパワー半導体がカギ。自動車や鉄道、エレベーターなど自社の事業でも使う根幹技術であり、社内にユーザーがいることが競争力につながるとみている。相互開発ができ、よい循環が生まれている。
為替やマクロ環境など外部要因を除けば堅実に事業展開をしているとの印象である。長期的に見れば安定的に成長できる可能性が高い。「強い事業をより強く」という同社のモットーを継続して、より積極的な事業拡大を進めてもらいたい。
(構成=衣谷 康)