民政移管後の初の総選挙となったミャンマーの総選挙が11月8日に実施された。ミャンマー上院・下院の計664議席のうち、軍人固定議席25%(166議席)を除く498議席が争われた。本稿執筆時点(11月13日)ではまだ最終的に結果は確定していないが、改選議席の80%以上を獲得してNLDの圧勝に終わった。与党USDPは事実上の敗北宣言をした。NLDは、選挙が延期となった7議席を考慮した改選議席657の内、単独過半数を獲得するために必要な329議席以上を確保し第一党となる。
世界中のメディアは、このNLDの圧勝の結果を「真の民主化への大きな第一歩」、「半世紀に及んだ軍事政権の終了」と報じた。確かに、軍事政権の流れを組むUSDP政権の終焉により、真の民主化への期待は高まる。しかし、2011年以降の民政移管後、テインセイン政権が進めてきた民主化と経済開放政策の成果も一定評価されるべきであり、大きな混乱もなくこのように選挙が実施されたことは、現与党による貢献が大きい。テインセイン政権による民政移管後の改革があってこそ、今回の選挙における国民の意思実現のための第一歩となったことを忘れてはならない。
ミャンマーの民主化を後方で支えてきた米国政府は、NLD圧勝の結果を受けて、オバマ大統領が電話でアウンサンスーチー女史に祝意を伝え、また同時に、テインセイン大統領にも電話を入れ、自由公正な選挙が実施されたことを評価し、テインセイン政権による改革が、ミャンマーに新しい未来をもたらしたと賞賛した。
今回の総選挙の争点は、現与党が進めてきた民政移管後の民主化の成果や、経済の改革開放の成果を評価するというよりはむしろ、軍政時代も含めた過去への総括として、ミャンマー国民が意思表示をした結果がこの結果と言える。現与党の意図した評価の時間軸とは裏腹に、国民が過去の総括をしたことは、前回選挙でそれが出来なかったことの反動も大きい。
5年前の総選挙(2010年11月)でNLDは、選挙をボイコットした経緯がある。更に遡ること1990年の総選挙では、NLDが圧勝しながらその選挙結果を軍事政権が無視、権力移譲を行わなかった。その意味でミャンマー国民は軍政時代も含めたこの半世紀、実質的に自らの自由な政治意思を表明する機会を封じられてきた。だからこそ、その過去を含めた総括として、今回の総選挙で真の民主化への強い意思を表明したと言える。