「被告は、他のことはスラスラ証言したのに、焦点の保険金の不払い問題になると、途端に記憶喪失になったかのように『覚えていない』『わからない』を20回以上も連発。周囲から『余計なことを言うな』と口止めされていたのかもしれないが、あまりの不自然さに傍聴席から失笑が漏れていました」(傍聴したジャーナリスト)
東京海上日動火災の社員が会社と元上司を名誉毀損で訴えた裁判が東京地裁で審理されている。10月9日の公判では、原告である社員本人と被告の元上司への証人尋問が行われ、原告が新たな不払いの存在を指摘する爆弾発言を行い注目を集めた。
訴状によると、2005年に発覚し社会問題となった大手損保各社の不払い問題に絡んで、元上司(当時課長、現在部長)は、一部の不払いの責任が原告の社員(当時課長代理)にあるとする虚偽の報告書を作成した。
これが原因となり、原告の人事考課は最高ランクのSから最低のDに4段階降下。「入社3年目の社員と同じ扱い」の主任に降格されて、遠隔地に転勤させられたとされる。
東京海上の保険金不払いは、02年4月から03年6月にかけて発生した自動車保険の「臨時費用」と呼ばれる約20万件の保険で起きた。総額は利息を含めると40億円超にもなる。うち18万件超は昨年5月、新たに同社が公表したものだ。
9日の公判で、原告社員は「上司らが組織的不正行為の一環として不払いを隠蔽。その責任を私に転嫁した」と主張。また「公表分以外にも00年4月~02年3月分が不払いになっている」との新たな証言を行った。
一方、被告課長(当時)は原告代理人弁護士から「05年、東京海上は不払いを68件と公表したが、翌年に1万8000件超に増え、昨年さらに18万件超に増えた。調査方法や基準が変わったのか」と何度も聞かれ、「思い出せない」と繰り返した。
なお、同社広報部は「係争中の事案に関わることですので、回答は差し控えさせていただきます」と話している。