「海外OK?」「はい」「インドは?」「……」

それにしても、海外で働きたくないのによく入社試験をパスできたものだと思う。

少なくとも大手企業にパスするには、能力要件として「海外志向」は不可欠だからだ。それに加えて、最近の面接のチェックポイントの1つが「海外に行かせても大丈夫か」というグローバル素養だ。

語学ができるのにこしたことはないが、それ以上に大事なのは「胆力」と指摘するのが大手石油業の人事担当者だ。

「赴任先はニューヨークやパリではありません。インドやベトナムなどの新興国が中心です。言葉は通じなくてもよい。物怖じしない肝が据わった度胸のある学生が欲しい。現地の文化に溶け込み、本音でぶつかり合えるような人物かどうかをチェックしています」

ベトナムの工場で働く人々。海外赴任はNYやパリなどではなく、アジアや辺境地であることも多い。

しかし、調査結果を見ると、あえて未知の外国に挑もうとする胆力が感じられない。今どきの学生の消極的な傾向はそれほど驚くにはあたらないと指摘するのは食品業の人事部長だ。

「入社面接で『海外でも働けますか』と聞くと、全員が『海外は好きです。どこでも行きます』と答えます。ところが、パスポートを持っていますかと聞くと『持っていません』と言う。また、昔なら休みを使って全国を自転車で回る貧乏旅行をした学生も結構いましたが、そういう学生はいない。ほとんどがキャンパスの周辺しか知らない学生が多い」

こうした国内志向は学生に限らない。人事部長は「入社後に海外に出たくないという社員が少なくないのが現実です。今の若い世代の価値観は違うし、それをけしからんと怒っていては前に進みません。それをわかった上で仕事に対する喜びや海外での仕事に魅力を感じるように仕向けていくようにしないといけません」と苦衷を吐露する。