「自白偏重」が生んだ冤罪事件

1995年に発生した「大阪女児死亡火災」で、放火・殺人罪などにより無期懲役が確定していた女児の母親ら受刑者2人が請求していた「再審」を大阪高裁が認め、刑の執行停止、釈放となった。

この火災について、検察側は、捜査段階で作成された受刑者の自白調書により、「放火」とし、「保険金目的の殺人」とみなした。ところが、弁護団による火災の再現実験では、自然発火の可能性があり、さらに自白の通りに放火しようとすると、いくつかの矛盾や不合理が生じると判明した。

受刑者が釈放されても、再審となると、そう簡単にはいかない。

2014年3月、静岡地裁での再審開始決定で釈放された袴田巌さんのいわゆる「袴田事件」は、いまだに足踏み状態である。

『袴田事件』山本徹美著(プレジデント社)

この10月15日、「袴田事件」の第二次再審請求審の即時抗告審で、東京高裁は、弁護側のDNA鑑定の手法が再現可能であるかどうか、検証するための実験を検察側の鑑定人のみによって実施する、と弁護側に伝えた。

要するに、検察側は弁護側のDNA鑑定を信用することなどできない、というわけである。

DNA鑑定の検証方法については、専門家・研究者に任せるほかないが、そもそも、そのDNA鑑定のもととなった血液の付着した「5点の衣類」自体に、数多くの「疑惑」がある。

その疑惑について簡潔に列挙してみると、発見された時期がいかにも「意図」を類推させるし、それが「いつ」仕込まれたか、袴田さんにそれを仕込む時間があったか、袴田さんにアリバイが成立するならば、何者かによって仕込まれたことになるが、それはだれか。