一番仕事をし、会社に貢献しているのは誰なのか? どれだけ精緻な評価の仕組みをつくっても、その本当の答えはなかなかわからない。しかしだからこそ、アピールという名の“ウソ”で出世をつかむチャンスが生まれるのだ。

私は人事のプロフェッショナルとして、さまざまな企業の出世ルールづくりをしたり、実際に出世させるかどうかを決める現場に立ち会ったりしてきた。そこからわかるのは、出世には2つの条件が揃うことが欠かせないということだ。1つは「必要条件」、もう1つは「十分条件」である。

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必要条件とは、経験年数や査定の評価など必ず満たすべき事柄だ。どの企業でも「課長になるには係長を最低3年経験」といった明確な基準が設けられている。

一方、十分条件とは、ひと言でいうなら「そのポストにふさわしい人物である」という、極めて漠然としたものだ。曖昧なのは、十分条件が状況により変化するからだ。事業が拡大しているときと、リストラ時では求められる人物像が違う。あるいは単に、組織でポストの空きが多ければ条件はゆるくなるが、少なければ厳しくなる。

十分条件はこのようにわかりにくいが、自分である程度コントロールできるという面もある。まずは、上司から評価されることだ。「出世させたい」と上司に思わせて、推薦をしてもらわないことには、何も始まらない。

このとき、「売り上げを伸ばして業績に貢献した」というような明確な成果があれば評価されやすいが、実務では数字に表れない仕事も多い。そこで「自己アピール」が必要になる。