誰も見ていなければ、何もしていないのと同じこと
「アピールしなくても、上司が仕事ぶりを見てくれているはず」と思う人も多いだろうが、それは“幻想”に過ぎない。「ゴミ拾い」を例にするなら、誰もいないところで一生懸命ゴミを拾っても、評価されることはない。評価されたいなら、やはり人が見ている場ですること。それも、誰よりも熱心に拾って印象付けることが大切だ。人目がないときは知らんぷりでいいわけではないが、なかなか評価はされないというのが現実だ。会議なら、上司がいるときこそ積極的に発言をして、イニシアチブを取る。それ以外は手抜きをしても、評価には影響しないかもしれない。できれば、常に積極的であるに越したことはない。しかし、出世のためには、人事権を持つ人に仕事ぶりを印象付けることが、最も大事であり、実際それを意識した人が出世しているという現実を忘れてはいけない。
このような上司に媚びるような行動を後ろめたく感じる人も多いだろう。では、スポーツ選手を想像してみたらどうだろう。野球でもサッカーでも、観衆の前で試合をするから面白く、その場で活躍した選手が評価される。フィギュアスケートもそうだ。練習でトリプルアクセルが何回跳べても、本番で跳べなければ意味がない。会社では、上司の前が“試合会場”だ。そこで頑張っている姿を見せようとすることが、果たして悪いことなのだろうか。むしろ、非難されるべきは、普段も頑張らず、上司の前ですら頑張らないような人ではないだろうか。
そうやって自己アピールするのと同時に、上司に好かれることも肝心だ。そのために心がけたいのは、上司の仕事のやり方を理解して、実践できる部下であるということだ。気を付けたいのは、上司が代わった場合。それまでの自分のやり方とまるで違ったとしても、新しい上司に合わせるのがいい。
加えて、上司の仕事ぶりを褒めるのも、好感を持ってもらうための手段になる。役職が上がるほど、仕事を他人から褒められる機会は少なくなるので、部下からでも、褒められると嬉しいものだ。ただし、思ってもいないことを口にするとウソだとバレやすい。ポイントは、少しでもいいと思ったことは、大袈裟に褒めること。1のことを100に膨らませるのだ。「さっきの会議での部長の発言に感動しました!」というように、具体的に言うと上司の心に響きやすい。
仕事を離れた場所でもチャンスは利用したい。通勤電車に上司と乗り合わせたら、お年寄りに席を譲る様子を見せたり、ゴルフで上司が見失ったボールを懸命に探したりということだ。もちろん、上司がいなくても同じことができれば言うことはないのだが。
さらに言えば、多くの会社において、昇進人事は話し合いのもと、多数決で決められるものなので、他部署の上司へもアピールしておく必要がある。自分が推薦されたときに、他部署から「彼は頑張っていますよ」という後押しがあれば、昇格の可能性は一気に高くなる。逆に、ネガティブな意見が出た場合はもちろん、「彼は隣の部署だけど、あまり印象に残っていないな」という誰かの一言で、昇進が消えるケースもある。