再開発事業で供給過剰を引き起こすか

常盤橋街区の再開発事業の全体像は、現在、朝日生命大手町ビルやJXホールディングスの本社が入るビルなどが立ち並ぶ約3万1400平方メートルの敷地に、延べ床面積でトータル68万平方メートルとなる4棟の超高層ビルなどを建設する。17年度に着工し、一帯を国際金融センターとする構想だ。さらにメーンとなるビルには展望台など都市観光施設も設け、「世界に負けないシンボル性のあるビルとする」(杉山博孝・三菱地所社長)。

しかし、国際金融センター構想は、隣接する大手町で現在進められている老朽化したビルを順繰りに建て替える連鎖型再開発事業とコンセプトがバッティングする。また、隣接する日本橋、八重洲の両地区で再開発事業を急ピッチで進めている三井不動産との競合も課題となる。同社は本拠地である日本橋の再生を目指し、矢継ぎ早に再開発事業を進めている。これに続いて、新たに日本橋から八重洲にかけた8カ所で再開発事業を進める計画も打ち出した。延べ床面積はトータルで200万平方メートル近く、投資額で9000億円を超える見通しで、三菱地所の常盤橋街区再開発事業を凌駕する。

さらに、八重洲では東京建物も再開発事業に着手しており、東京駅周辺での競争は激しさを増す一方だ。三菱地所は丸の内でビルを建て替え収益を上げる手堅いビジネスにより、ビル事業においては不動産最大手の三井不動産を押さえて国内トップの座にある。しかし、それに安住していては今後の成長戦略は描けない。丸の内を飛び出してまで敢えて場外戦に挑む姿は、新たな飛躍を目指す決意表明でもある。

東京駅周辺で途切れなく続く再開発事業は今後、供給過剰を引き起こす可能性が懸念される。常盤橋街区再開発の完了が27年度であることを考えれば、三菱地所に不利な面は否めない。その意味でも、三井不動産と真っ向勝負となる常盤橋街区再開発の正否は、三菱地所の今後のビル事業を左右しかねない。

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