労働は「必要苦」なのか?

藤野英人(ふじの・ひでと)●レオス・キャピタルワークス取締役最高投資責任者。1966年、富山県生まれ。90年早稲田大学法学部を卒業後、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、03年レオス・キャピタルワークスを創業。以来、CIO(最高投資責任者)を務めている。中小型株の運用に長け、東証アカデミーフェロー、明治大学非常勤講師なども兼務する。
ひふみ投信
http://123.rheos.jp/

【藤野】労働って素晴らしいことだと思いますが、多くの人にとっては「大企業で働く」とか「公務員になる」とか、どの組織に属するかが大事で、そこで何をするかはあまり重要視されていないように思います。

【若新】そうですね。NEET株式会社では、ニートが全員取締役になってますが、それに対して「会社をつくって取締役になるだけじゃ意味がない」という声が結構あります。でも、そのとおりなんです。意味がないんです。全員が取締役になるNEET株式会社という存在自体が、「労働は所属や枠組みではない」というアンチテーゼなんだと思います。

【藤野】僕が担当する大学の授業で、「働く」ことのイメージを受講生に語ってもらったところ、多くの人にとって労働とは「必要苦」であり、「働くことはストレスと時間をお金に換えること」だということがわかりました。自分が自由に社会と接していると感じている人は少なく、会社という縦組織に自分を放り込み、自由を奪われる代償として給料をもらっていると考えている人が多い。つまり、会社組織に所属して、上司から与えられたタスクをこなすことが仕事だという価値観です。だから仕事がつまらないんですよね。

その証拠に、通勤電車に乗る人たちの表情に笑顔はほとんどなく、みんな暗い顔でそれぞれの駅で降りていきます。でも海外では、電車に乗る人たちの顔が楽しげです。きっと仕事が楽しいんでしょうね。仕事とは本来、楽しくあるべきだと思います。

【若新】仕事を「必要苦」と考えているのに、それをあたかも苦しくないかのように振る舞っていることが、大きな問題だと思うんです。仕事を楽しくするには、仕事が苦しいとかつまらないと思っていることを直視し、それを素直にポップに表明できるようになることが大事というか、前提条件だと思います。NEET株式会社のメンバーは、仕事や社会で生きるうえでの苦しさやつまらなさを隠そうとはしません。なんというか、素直に負けを認めている(笑)。

でも、メンバー間で議論になると、お互いに一歩も譲らず、めちゃくちゃ激しく衝突します。そして最近は、衝突しながらも執着する、不思議なつながりができてきました。僕はそれを「“限りなく憎しみに近い愛”社精神」と呼んでいます(笑)。

ほとんど売り上げがなく、給料もほとんど出ない。世間からはふざけているだけだと思われている。でも、みんなNEET株式会社の取締役であることを辞めない。お金を稼ぐということ以外の「何か」を見出しているのかもしれません。ただ辞任届を出すのが面倒くさいだけかもしれませんが(笑)。