大前氏の朝は早い。毎朝4時に起床し、世界の500記事をチェックし、NHKBS放送で海外のニュースを視聴する日々を送っている。膨大な情報の中からどのような点を見つけ、行動を起こしているのか。
「すべてゼロから考えたらいいさ」
フレームワークを用いたアプローチは、大前流の問題解決の典型的な手法だ。私に「気づく力」があるのかどうかはよくわからないが、そういう錯覚を与えているとしたら、その源泉はフレームワーク(を作る)力にあると思う。
「大前さんはどうしてそんな新しいアイデアが出てくるんですか」とよく聞かれるが、自分では「新しいものを生み出している」という意識はほとんどない。
私の場合、何か閃いて新しい発想を得るわけではない。自分自身に質問を投げかけて、それを解くための具体的なフレームワークを作り、それに沿って端的かつしつこく、頭の中で問題解決法を構成して出てくるものにすぎない。問題解決のための論理的思考を血肉になるまでとことん鍛練した結果、どんな物事や現象を見ても、すぐに解決方法が見つかるようになった。これは後天的なものである。
「人が気づかないことになぜ気づくのか」と問われても答えようもないのだが、1つの理由らしきものを挙げるとすれば、私には極めて疑り深い点があるということだ。知っているとか覚えている、ということはなく、「すべてゼロから考えたらいいさ」と開き直って、自分なりの問題定義と問題解決をその都度やっているのである。だから、人の話を鵜呑みにしない。他人の言うことを、そのまま正しいとは思わない癖をつける。そして「おかしい」と特別に違和感を覚えたら、徹底的にその瞬間に考え、調べ上げるのだ。
近頃、中国や韓国が日本を非難するときに「歴史を直視せよ」「歴史を直視しない民族に未来はない」と言うが、余計なお世話である。ならば「自分たちは歴史を直視しているのか」と言いたくなる。実際、直視していない事例を調べてみると山のように出てくる。