外国人のエンターテイメントの楽しみ方
【三宅義和イーオン社長】日本で英語落語を演じる場合、外国人と日本人の割合が違いますよね。その時に外国人が多い時は、当然英語が多く、日本人が多い時は日本語の割合が多いと気づきました。そのあたりも気をつかっていらっしゃる。
【桂かい枝師匠】英語落語っていうと、難しい英語で分かりにくいと思われるかもしれません。特に国内で学生さんに英語落語を聞いてもらう際も、噺の中味をわかってもらう必要がありますから、分かりやすい英語で、しかも日本語を織り交ぜながらやります。英語落語を聴いて、英語が好きになってもらうのが目的ですから。とはいえ、英語落語はいろんな国の観客に対応できる。それは不思議だし、楽しい。日本語でしかやっていないと日本のお客様しか相手にできませんが、英語でやってると世界の人を相手にできる、やっぱり英語ってすごいなって思います。
【三宅】2008年の全米落語ツアーの話を聞きましたが、どんな場所で公演されたのですか。
【かい枝】きちんとした劇場での公演以外にもキャンプ場や公園といった屋外でゲリラ的に落語やったりしましたね。「やりますよー」と声をかけて、「落語やるから来て下さいね」という感じです(笑)。
【三宅】だけど、アメリカ人も歌舞伎とか能は知っていても落語ってなかなか知らないのでは。
【かい枝】全然知らないです。だから、すごく不思議そうな顔で、みんな遠巻きに見ている。話しているうちに、だんだん近づいてきて、最後はもう拍手をバーっとやってくれ、仲良くなる瞬間はたくさんありました。そうやって点と点をつないで線にする。実際、半年間をキャンピングカーで移動して、草の根的に落語の文化を広められたかなと思っています。
【三宅】最後の公演はブロードウェイの「ニューヨーク繁盛亭」で、900人の観客がスタンディングオベーションだったそうですね。
【かい枝】はい、たくさんのお客さまに来ていただきました。楽しかったですね。だいたいニューヨークで日本人がイベントをやる。例えば、有名な歌手がニューヨーク公演とかよくやられるけど、たいがい日本の人ばっかりらしい。僕の場合は逆。というのも、地元の新聞社とか回って取材もしていただいた。黒人の集会に出て宣伝したからでしょうか。いろんな人が応援してくれて、そのおかげで9割が外国人でした。
【三宅】それはすごいですね。彼らは面白いことを言うと、ちゃんと反応してくれますよね。感動とか笑いを大袈裟に表す。私も着任したばかりの外国人教師と話す際、真面目な話だけじゃ、もう全然面白くないので、何かジョークを交えると、彼らはスーッと聴いてくれる。
【かい枝】そう、心を開くというか、認めてくれるというか、そういうところってすごく感じました。だから、世界中で公演してみると、日本人はあまりエンターテイメントを楽しむのが得意じゃない気がします。もちろん、海外でやる場合は、とりわけ初めてのお客さんにとって落語は異文化だから、それなりに受け入れてもらいやすいとは思うんですけど、日本人は知っているものに対しても、なかなか心を開かない(笑)。だから、もっと純粋に楽しんでくれたらいいのにと思う時もあります。