成長の原動力は「3PL」事業

SBS成長の推進役は「3PL(サードパーティー・ロジスティクス)」と呼ばれる事業だ。国内ではその先駆者として知られる。「3PL」とは、荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案から、梱包、輸送、保管、荷役、情報管理といった物流システムの構築までを一括して請け負う事業だ。

この事業がインターネット通販の普及によって拡大した。SBSは百貨店や家具・雑貨会社などの物流業務全般を一括で受託している。14年12月期決算では、「3PL」事業の売上高は全体の3分の1の485億円だったのを3年後には700億円にまで拡大させる計画だ。

「3PL」事業には、不動産と金融の知識が欠かせない。大手企業の物流業務を一括で受ければ、大きな倉庫が多数必要になる。首都圏で1万坪クラスの倉庫の建設費は最低でも50億円。大きな投資が必要になるうえ、倉庫の賃料設定を誤れば、顧客が逃げる。こうしたリスクを回避するため、金融技術を駆使して倉庫は信託受益権にしてファンドや投資家に譲渡してバランスシートの肥大化を防ぐ。このため、SBS本社には鎌田氏自らがヘッドハントした大手銀行やファンド出身者が多い。

また、利回りから算定して賃料を決めるのではなく、どんな不景気が来ても顧客が逃げない賃料を、物流業界に長年いた者しか分からない鎌田氏独特の相場観で決め、そこから逆算して建設コストもはじく。SBSは倉庫・運送会社と投資銀行が融合したような会社だ。

鎌田氏の経営者像は、独特の勘を持つ叩き上げ運転手と明晰な頭脳を持つ戦略家が融合したイメージだ。小学生の頃に実家の材木問屋が倒産する憂き目に会い、子どもの頃から数多くのアルバイトをこなして家計を支えてきた。佐川急便に入ったのも、貿易商になろうと考え、短期間で資金を貯めるためだった。その才覚を認められ、佐川では20代で営業課長を務めた。SBSの創業と成長は、鎌田氏の苦難の人生抜きでは語ることはできない。

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