先輩に学んだ切り替えの大切さ

このように、提案書一つつくるには、簡素なものでも説明に十分なバックデータを整える必要があり、そのための手間と時間は相当なボリュームになる。小林さんの1日のスケジュールを見ると、午前は内勤だが正午を待たずに外回り。帰社は夕方だ。「日常業務のなかで、提案書づくりに集中できる時間はあまりとれない」という。では、時間をどう捻出しているのか。

「朝早く出社して作業することが多いです。あとは、移動中の車の中で考えていたり、夜、自宅でやったりもします」

調べ物などはむしろ、まとまった時間を自由にとれる自宅のほうが集中できるという。しかし、それでは仕事漬けで気を休める暇がないのでは?

「そうでもないですよ」と小林さん。「私、切り替えが早いほうなので、ずっと仕事にかかりっきりになるということはありません」。趣味のヨガと料理に割く時間は大切にしているという。

オンとオフの切り替えをはっきりさせることが大切だということも、小林さんは先輩社員から学んだ。アサヒビールには、まったく異なった部署の先輩社員につき従って、その業務を体験する「武者修行研修」がある。その際、小林さんは先輩社員に「勤務時間内は仕事に集中しなければならないけれど、そのほかは自分の時間。それを大事にして楽しまなければもったいない」といわれたという。

きつい仕事も飄々とこなし、帰宅後や休日を楽しみにしていたその先輩の姿に、小林さんは感じ入るものがあった。

「入社2年目頃までは、休日に家にいても仕事のことが頭から離れず、落ち着かない日々を過ごしていました。でも、先輩の言葉に触れて、長く仕事を続けていくにはそれではだめなんだと思いました」

手厚い下準備と、迷わず切り捨てる、切り替える潔さ――このあたりが“MVP”たるゆえんに違いない。

●小林さんの24時間

(上)部内打ち合わせ(中)ヨガ教室(下)ノートでスケジュール管理。営業実績や、新商品発売日etc.をメモ。

5:30 起床(準備・弁当作りなど)
6:30 出勤
8:00 出社(内勤)
9:00 部内打ち合わせ
9:30 内勤
11:00 営業車に乗り込む(車中で弁当)
13:00 商談
14:00 外回り
17:30 帰社・内勤
19:30 ヨガ教室
21:30 帰宅
24:00 就寝

(工藤睦子=撮影)
【関連記事】
あなたの文が読まれない5つの理由
プレゼン・商談後、また会ってみたいと思わせる「褒め殺し話法」
提案書――「結論3つ、個条書き」パワーポイント術
『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』高橋政史著
プレゼンの達人がよく使う“誇大グラフのトリック”