小林さんは、「まず設計図をつくる」という。
設計図は、A4判1枚の紙。上下2段に分かれていて、上段には「提案の目的」「伝えること」「営業目的」とあり、各欄に盛り込むべき項目がずらりと並ぶ。下段はプレゼンの展開を書き込むかたち。それらの項目に沿って、必要な資料や情報、企画要素を提案書に落とし込んでいく。
「先輩が使っていたのを見て、いいなと思い、真似ました」と小林さんはいう。
「たくさんの資料や企画要素を検討していると、どれを拾っていいのか迷ったり、あれもこれも使いたくなるということがありますね。でも、この設計図があるとその都度、本来の目的に立ち戻って考えることができます」
プレゼンの展開を書き込むのも、この設計図の見どころ。
データの説明がダラダラと続いたり、饒舌だが真意が伝わらない羽目に陥らないための、いわば台本フォーマットである。これでチェックしていけば、盛り込む要素の取捨選択がしやすくなり、すっきりとして流れのよい構成になる。優れた「ストーリー性」の秘訣はこれだ。
設計図もさることながら、小林さんは上司や先輩の「いいとこ取り」に熱心だ。
「先輩の提案資料のつくり方がいいなと思うと、すぐに真似します。提案書とはまったく関係のない社内メールなどでも、よい表現があればいただきます」
まずは真似てみる。そして次に、わからないことや知りたいことは躊躇せず上司や先輩に聞く。資料の組み方、ほしいデータの出どころ、相手の気持ちのつかみ方など。それも社内メールで簡単に済ませたりはしない。必ず当人に会って話を聞く。それが礼儀であるし、「そのほうが得心がいく」からだ。
「上司や情報を下さった先輩には、提案書案を見せ、アドバイスをもらいます。プレゼンのリハーサルに立ち会っていただくこともあります」
それは同時に、小林さん自身のスキルアップと、表現の引き出しを増やしていくことにもつながる。
注目すべきは、そうやって苦心して集めた情報やデータに、小林さんが拘泥していないことである。使い方に不適切な部分があったり、訴求効果が薄いと判断すれば、せっかく集めたデータや資料でもばっさりと切り捨てる。こうして提案書をブラッシュアップし、意図の伝わりやすいものに仕立てていくのだ。