【STEP4】上級者編

ここまでのステップ(http://president.jp/articles/-/15413)を踏まえたうえで、さらに高度な数字の扱い方を述べておこう。統計処理である。

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(図上)正規分布(図下)べき分布

平均値を取るにせよ何にせよ、統計はデータの「分布の仕方」が、実は非常に大切である。ごく普通に平均値を中心とした左右均等・釣り鐘型の分布(図上)を正規分布と呼ぶが、それとは別に、偏りのある、べき分布という分布(図下)の仕方がある。双方の違いを理解していないと、統計処理を行う際に間違いを犯してしまう。

たとえば、「日本人の金融資産の5割は預貯金」であり、それに対して「米国人は同程度が投資信託や株式などのリスク資産」であり、日本人はもっとリスク資産に手を出すべきだ、などとよくいわれる。

が、これは統計の素人の物言いか、逆に統計を熟知した人が素人を騙すための方便であるかのどちらかだ。

平均値を取れば、統計的には確かに正しい。しかし、金融資産額とその保有者の数とは、実はべき分布しているのだ。米国では個人金融資産額の上位1%の人がその中の株式の約50%を、上位5%の人が約80%を持っている。極端に超富裕層に偏っていて、下の層は株などほとんど持っていない。少し古い統計だと、一株でも株を持っている人の割合は、実は米国より日本のほうが高いのである。

だから、単に金融資産額を人数で割った平均値だけ見ていると、実情を見誤ることになる。数字というのは事実だが、実は「正しくない」場合があることを知っておかねばならない。

私は統計の専門家ではないが、分布などについてある程度のことを知っていれば、数字をハンドリングしやすい。さらに高度な、たとえば飛行機の墜落や地震といった滅多に起こらない事象が起こる確率を計算するポアソン分布というものがあるということだけ知っていても、数字の見方は違ってくるだろう。