素直に話せる新しい世間との出会い
病気に対する不安については、同じ病気になった人でないとわかりません。妻が通院するのは3週間に一度で、しかも診察は数分で終わるため、どのように闘病生活を送ればいいのか、主治医から詳しく教えてもらうことができなかったのです。そのため妻は、本やネットで調べていましたが、何を信じたらいいのか、わからないことも少なくなかったのです。
うつ病になるのも時間の問題に思えた妻を救ってくれたのは、「乳がん-ブログ村」でした。闘病しながらも日々の生活を楽しんでいる人の存在を知って妻は驚き、その世界に引き込まれていきました。顔も名前もわからないつながりだからこそ、相談しやすかったのです。自分と同じ治療の一歩先を進んでいる人にも相談できたため、確認したいことが出てきても診察の日を待つことなく、すぐに不安を解消していけたのです。
たとえば、病気の症状をはじめ、抗がん剤治療のとき、口内炎と味覚障害の副作用軽減のため氷をなめたり、身体の末端に抗がん剤が溜まらないよう手足をアイスグローブで冷やしたりするといい、という情報や、自分が飲んでいる薬の確認、副作用によって荒れた手足に塗るのにいいクリームのことなどを教えてもらっていました。
さらに同じ病気だからこそできる家族のことについての相談などもしていました。妻自身も日々の確認、病気になる前の生活を振り返るためブログを始めたこともあって、「乳がん-ブログ村」での交流はますます深まっていきました。ときにはオフ会にも参加し、できる限り闘病での不安を解消していったのです。
妻が「乳がん-ブログ村」と出会えていなかったら……と想像しただけで恐ろしくなります。そのくらい、妻はこの世界の住人になることで救われたのです。